Ma griffe

「ひなちゃん、キスする場所によってキスの意味が違うって知っている?」

大地から突然、そんな話題を振られたかなでは、手にしていたペットボトルを
危うく落としそうになる。
ある土曜日の午後。
大地とかなでは、菩提樹 寮の庭で音合わせをし、小休憩をと木陰で休んで居た。
そんな時にいきなり大地から振られた話題に、かでは「はい」とも「いいえ」とも答える事
出来ず黙り込んでしまう。
可愛い恋人の思った通りの初な反応に、大地の悪戯心が芽生えた。

「知らないなら、俺が教えてあげる…。」

大地はかなでとの距離を詰めると、先ずは彼女の小さな手の上にキスを落とす。
「大地先輩っ…!」
かなでは慌てて大地から離れようとするが、しっかりと肩を抱かれていて、動く事が出来ない。
「額の上は友情のキス、頬の上は厚意のキス…」
 大地はかなでに説明をしながら、額、頬、唇、瞼へとキスを落として行く。
大地からのキスを甘受しているかなでは気が気ではない。
幾ら寮生が十数名しか居ないとは言え、こんな場所でキスをしていたら誰かに目撃されてしまいそうで。

「手首へのキスは…、何だと思う…?」

大地はかなでの手を再び取り、今度は彼女の手首にキスを一つ。
「そんなの…知りません…っ」
本当にかなでは可愛い…。こうも予想通りの反応をされると、もっと苛めたくなる…。
大地は蠱惑的な笑みを浮かべて、かなでの耳朶に唇を寄せて囁いた。

「手首へのキスは、欲望のキス、だよ…。」

それを告げられたかなでは耳まで真っ赤になってしまった。
「ひなちゃん、本当に可愛過ぎ…。」
大地はかなでの肩を強く抱くと、耳朶にキスをして熱っぽく囁いたのだった。



「今日はこのままかなでの事を浚うから、覚悟しておいて…。」と。